20.「正しく怖れる」とは?

こんにちは。

 

新型コロナウイルスを巡る報道や記事の中で、「正しく怖れる」という言葉をしばしば見聞きします。

 

この言葉、なんだか違和感と胡散臭さを私は感じます。

 

今回は、「正しく怖れる」と「コンサルタント」との関連について思ったことを記します。

 

空家の相談は→「空家レスキュー119番」まで

 

 

「正しく怖れる」の元となった文

 

「正しく怖れる」は、物理学者で文筆家の寺田寅彦の随筆『小爆発二件』の次の文が元になっているそうです。

「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」です。

 

※解釈の一例→「正しく恐れる」と「正当にこわがる」

※卒業式の式辞→大阪大学大学院情報科学研究科長

※ちなみに「恐い」と「怖い」の違いについては、
「怖い」と「恐い」の違いは一つ!使い分けは簡単な「こわい」

 

そして、「正しく恐れる」「正しく怖がる」をタイトルに入れた書籍も出版されています。

(以下の画像は楽天から引用)

 

 

 

 

なかには、こんな書籍も。

 

 

寺田寅彦の思いを転用するコピー

 

再度、寺田寅彦の文を記します。

「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」

この文で寺田寅彦が言いたかったことは、文末の「正当にこわがることはなかなかむつかしい」だと思います。

 

しかし、世間では、
「正しくこわがることはなかなかむつかしい」を転用し、「正しく怖れなさい」という意味に使用しています。

さらに、
「正しい知識を持って,正しく恐れて、正しく行動しなさい」というフレーズが多用されているように感じます。

 

寺田寅彦自身は、単に「正当にこわがることはなかなかむつかしい」との思いを述べているに過ぎません。

寺田寅彦の思いである「正しくこわがることはなかなかむつかしい」が「正しく怖れなさい」と転用/流用されているのです。

 

 

「正しく怖れなさい」とはどんな意味か?

 

「正しい」は、二つの意味があります(goo辞書参考)。

一つ目は、「道理にかなっている。事実に合っている。正確である」という科学的視点です。

二つ目は、「道徳・法律・作法などにかなっている。規範や規準に対して乱れたところがない」という倫理的視点です。

 

さて、「正しく怖れなさい」は科学的/倫理的のどちらの意味で使っているのでしょうか?

 

科学的な意味で使うならば、何の問題もありません。

無作為のデータを分析すれば、正しい知識が得られるはずだからです(科学者の良心に期待します)。

 

しかし、倫理的な意味で使うならば、「政治的/経済的な意図」がそこに潜んでいるのではないかと勘繰ります。

 

 

 

「正しく怖れなさい」という意図とは?

 

「正しく怖れなさい」は、今回の新型インフルエンザだけではなく、2011年の福島第一原発事故の際にもたびたび使用されたコピーです。

 

 

だれが主に使ったかと申しますと、原発を支持する方々でした。

「(科学的に)放射能の数値は安全範囲内だから(倫理的に)怖れる必要はありません」という主張があったのでしょう。

ここでいう「(科学的に)」は、主張にとって都合の良いデータを示して「(科学的に)」と言っているに過ぎないと私は感じました。

さらに、「(倫理的に)」からは、「お上と、いわゆる原子力村の言うことを聞きなさい」という圧力を感じました。

すなわち、原発事故の際に「正しく怖れなさい」と発言した人々の意図は、「原発反対派の言うことは(科学的に)正しくないから、彼らが怖れることは(倫理的に)正しくない。我々の言うことが科学的だから我々を信じて怖がらないでいなさい」ということだったと私は考えます。

 

では、今回の新型コロナウイルスについてはいかがでしょうか?

残念ながら、今回も前回の原発事故と同じく、科学的な正しいデータに基づいた政策でもなければ、倫理的に公正に決めた政策でもないと思っています。

 

 

コンサルタントの倫理とは?

 

「経営陣のアリバイ作りのコンサルタント」と揶揄されることがあります。

本来は、企業の財務や人事の現状と原因を分析し今後の改善策を提案するのがコンタントの役割。

しかし、経営陣にとって都合の悪い現状を明確に示し、都合の悪い改善策を提案すると、顔色が急に変わり反発心を見て取れることがあります。

誰でも、自分にとって都合の良い「(科学的)かつ(倫理的)正しさ」を欲するものです。

ここで経営陣に媚びた(今の言葉で申せが、忖度した)提案をすると、「経営陣のアリバイ作りのコンサルタント」になってしまいます。

 

しかし、事実に忠実に、科学的かつ倫理的に正しい政策を提案するのがコンサルタントの力量であり倫理です。

 

 

 

なお、科学的なデータが見つからない時は、あるいは幾つかのデータがありどちらを採用して良いか不明のときもあるかと思います。

その時こそ、寺田寅彦が言いたかった「正当にこわがることはなかなかむつかしい」に忠実になりましょう。

危ういデータを一方的に正しいと決めつけて提案するよりも、「むずかしい」という現状を示したいものです。

 

頑張りましょう!

 

 

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